そろそろ演劇の話をしようじゃないか。

7月も終わりに近づきいよいよ稽古が始まります。
次にやるのは清水邦夫の『楽屋』。
あたしが最初に見たのは新宿梁山泊のスズナリでの公演でした。

清水邦夫の作品を見るのははじめてで、女優4人の楽屋でのお話。
それはそれは面白くて、すぐにひきこまれて、その舞台に釘付けになりました。あの衝撃は忘れられません。杏理ちゃんも出ていたよね。

いずれ自分も楽屋をやりたい。そう思って10年は経ったんじゃないかな。その間にも2回ほど見ました。ひとつは杏理との再会のきっかけとなった舞台でした。

楽屋のなにがすごいって、戯曲の面白さと女優の思いを凝縮しているその完成度の高さ。清水邦夫は日本が誇る劇作家のひとりです。

女優なら、演劇をやっている女性なら、誰しも一度はやりたいと思うんじゃないかしら。あたしも、そして今回の公演の言い出しっぺである多田亜由美さんもその中のひとり。やっぱり楽屋は夢でした。

今回、いろーんなことがめくるめくって上演することになって、豪華な演出&ゲスト陣に驚愕しつつも、感謝しながら、挑んでいくしかないのです。

それにやりたいと思っていた女優B!これは本当に嬉しい。よく女優Dだと思ったと言われるのだけど、言われるのもわかる、きっとあたしのイメージは女優Dなんだな。あたしもやるならBかDかと思っていたけれど、やっぱりBがよかった。永遠の役がニーナの女優B。

でもね、あたしの永遠の役はニーナではないの。かもめならマーシャに共感するし、でもマーシャになりたいとは思わないけど、ニーナはそんなにあたしの中で魅力的な役ではない。

永遠の役を考えた時、そこには唐十郎作『秘密の花園』の「いちよ」と「もろは」がいました。一人二役のこの役は本当に役者を選ぶと思う。緑魔子さんに宛て書きしたものだからという以上に、難しい役。お姉さんキャラと少女キャラ、両方を演じられるある意味中性的でないと駄目だと思う。

と、内輪話をしても仕方ないですね。わからない人は読んでもつまらなくなるだけだかららら。

さて。そろそろ演劇の話をしようじゃないか、と大層な題名をつけたのなら演劇のしをしましょうか。演劇、それはなんなんだろうと今でも思う。きっとかつて望んでいたよりも今のあたしは演劇に触れてなくて、演劇で生きていない。でも渇望している。もっと演劇に浸かって生きていたいと。演劇に何の魅力があるんだろう。それは実はわからない。でもね、うーん、これを言うとすごく感傷的になってしまうかもしれないけど、あたしは昔から見えないものが見たかったし、触れられないものに触れたかった。だから、それを得る手段はあたしにとっては演劇だった。
小学校の部活からずっとしていたし、他にあたしには手段がないと思っていたから。最初は役者志望だったけど、いつからか自分の世界をあらわしたいと、劇作・演出を志し、すべてをこなしている唐十郎へ弟子入りしたよね。弟子入りというか、劇団唐組に入団したのだけど。
在籍していた時は、唐十郎が1番面白い!という他の団員たちに賛同したくなくて、だって他にも面白い戯曲や演劇はたくさんあるし、とにかくあの狭い世界に縛られるのが嫌だった。でも4年経って退団して、気づいた。唐十郎が1番面白いと。うーん、1番は語弊があるのかな。
ただね、あたしが求めているものを、彼の世界は持っている、そう思う。それは今の演劇界には求められていないんじゃないかな。今の若い人達はそれを求めてないんじゃないかな。
ただ唐十郎はじめ80年代の演劇ブームを起こしたあの人たちはみんなそれを表していたと思うの。それは今でもポスターを見るだけで、胸に沸き上がるあの高揚感。ドキドキしてわくわくして。見るだけで燃えたぎるような興奮や感情や、時にはノスタルジーや、悲しさや涙や、悔しさや、そして何処かに忘れてきてしまった言葉にしにくいよくわからないモヤモヤしたものたちを一気に焚きつける、あの熱い熱い衝撃を!!
もちろんそんなアトラクション的なものだけが演劇とは言わない。あたしは新転位の芝居も好きだし、静かな演劇だって好きだ。それにどちらかというとあたしの作る演劇は静かな方だと思う。アトラクションではない。でもアトラクションだって静かなものがあるでしょう。ただスピードで音だけでぶったぎるようなものだけじゃなくって、例えばお化け屋敷のような。。。まあジャンルはいいのさ。表現の仕方はなんだって。ただね、とにかく、見られないものを見せて欲しいの。忘れていたものを思い出させて欲しいの。日常じゃ感じられないものを感じさせて欲しいの。その見えない境界線のむこうから、否応なしにぶつけてきて欲しいの。それで傷ついたってかまいやしない。立ち上がれなくたっていいの。それはもうあたしの問題だから。だからどうかその割れかえるような高揚感と衝撃を演劇で!!

ああ、最後は楽屋、いや、かもめの台詞ですね。
「割れ返るような名声を!!」

割れ返るような名声欲しいですね。

ただあたしは演劇で何をしたいか。あ、風だ。そうだ風を起こしたいんだ。
風の話。これはどこかでしたのかな。ライター講座の課題文に書いて金賞をもらったけれど。blogには書いてないかな。

では、いずれ、その風の話を。

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こちらの絵はあの宇野亜喜良先生の絵だよ!
杏理ちゃんも作ってたけど。
あたしは好きすぎて好きすぎて作るのをためらってたんだけど、その余計なプライドのために期間限定のこれが終わってしまっては元も子もないので作りました。だって好きなんだもん。