十村十枝子

あたしが人生で憧れる女性は幾多もおりますが、漫画でいえばやはり富江。中学生の頃から彼女になることがあたしの願望でありました。きっと被害者になりたくなかったんでしょうね。でも富江をよく思えば彼女もまた被害者だったのだと思います。加害者、被害者ってなんなんでしょう。でも、それを置いておいても、今だって富江になりたい、そう思います。

そして人間昆虫記の十村十枝子。
「ふきとばされそう」
彼女のその言葉。胸に焼きつきます。

吸い取って吸い取って。そこには虚しさしかなくって。生きるって大変。そんな彼女の呟き。
逆にあたしは吸い取られている気がする。芝居をする度に、恋愛をする度に、吸い取られる気がする。けれど水の星座。いくらだって水を出せばいい。でも瞬間、瞬間、枯渇する疲労はあります。

芝居でいえば、一番はやっぱりカルメルの時。あの時はすごく衝撃的な体験で、1時間15分の1人芝居に肉体よりも精神がやられました。こう公演毎に、胸にハート型の穴が空いていく感じ。エネルギーが吸われる。なくなっていく。生気が枯渇する。だから休憩中は誰かに触れてなくちゃいけない。抱きしめてもらわなくちゃいけない。触れてその人からエネルギーを補わなきゃ。そんな感覚。だからただの男友達にだってハグしてもらってました。有難う。あれはとても良い経験だった。

人間昆虫記を呼んで、勿論、十村十枝子には憧れたし、彼女のようになりたいって本気で思ったけど、ふと思えばね、あああたしは逆なんだなと。吸い取られて吸い取られて。でもあたしにはその方が合っている気がする。提供する。与える。そしてその分、違う安堵をいただく。やりたいことをやる。きっとそれが本望だから。

でも、それでも、いつかは十村十枝子になれますように。

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