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6月になって。久しぶりに湊かなえを読みました。現代作家の小説は読まないと薄く決めているあたしにとって湊かなえは例外。彼女はすごい。読んだら最後、最後まで読み切ってしまわないと気が済まない。そして読み切ったあとに心を持って行かれるあのすごさ。半端じゃないです。

といったところであたしは告白しか読んでいないのだけれど。今ドラマでリバースをやっていて軽く見たら気になって。でも小説は家にないから、家にある「往復書簡」を読もうと思って。これはちょうどタイミング良く、TV制作のお仕事で満島ひかりちゃんをやっているので「北のカナリアたち」について調べたことがあって。ちょうど湊かなえの「往復書簡」の中のお話が原案で。だからそれを読みました。

案の定眠れなくなるよね。12時くらいに読み始めて読み終えたのが2時。怖くなっちゃって。明かりをつけて寝ました。でもこれの唯一の救いは最後が決してバッドエンドじゃないこと。仄めかすハッピーエンドが有り難かった。

湊かなえの何がすごいってその文章力だと思う。緻密な構成力はもちろんなんだけど、それを最大限に活かすあの文章がすごい。読みやすくって、素直で、どんどん頭に入ってくる。ん?って止まるところはちゃんと伏線を張っているところ。だからきちんと一緒に進んで行ける。最近は随分、泉鏡花で苦労していたから、どんどん読み進めていくのが嬉しかったし、痛快だった。

痛快といえば先日友人宅で観た「熱海殺人事件」。いやーなにがすごいって仲代達矢の気持ち悪さ。一気に気になる存在になりました。ただの大御所じゃなかったんだなと今更ながら知りました。お恥ずかしい。つかこうへい脚本の映画はこれまでに3本観てるけど、「蒲田行進曲」「青春かけおち篇」そしてこの「熱海殺人事件」。全く色褪せてないのがすごいと思うの。笑うところも無理せず笑えて、テンポのよいストーリー展開とか、そして何よりも登場人物の濃さ。これはあたしが大好物のものです。アクのある人ばかり。アクがある人が好きです。つかこうへいの映画作品はそこが魅力。役者もみんな個性豊かなのがいいよね。志穂美悦子さんもとっても素敵でした。仲代達矢と志穂美悦子を観るためにもう一度観たい。仲代達矢のあの外人みたいな透き通っているいかれた眼が好き。

そして。やっとのことで若松孝二監督の「キャタピラー」を観ましたよ。これもお仕事で寺島しのぶさんをやっているからなんだけど、すごく観たくなってしまって、やっと。若松監督は唐さんと交流があったし、劇団の先輩も映画に出てたから、観ろよってかんじなんだけど、特にあさま山荘、ずっと観ていなくて。キャタピラーはやっと。うーん。予想したよりも、昨夜読んだ湊かなえほどは心に残らなくて。それでもシンプルな作りで見やすかったなと。そして感想などにあったように、確かに反戦映画のわりには、ただ食べてSEXして寝ての繰り返しだけ。もちろんその中に戦争の映像とか色々あるけれど、基本はそれだけ。それは、なるほどすごいよね。あたしもこういう生活に覚えがあるからそう思うのだけど、人間の営みってこういうことなんだと思います。

あ、書きたいことを思いだした。湊かなえの小説のもうひとつのすごさは、それぞれの視線。1人称で語られる小説は、その人目線でしかわからないんだけど、湊かなえの小説は、そうだよね、それぞれの思考、感情、人生があるよねって思う。そして、あの時こっちの人はこう考えて、そっちの人はこう考えていたんだな、ってそう思う。当たり前のことなんだけど、それってなかなか忘れがちだし、考えが及ばない時がある。だってあたしはあたしの肉体と感情で生きていて、あたしの経験値、価値観で物事を考える。その一方的なものでしかない。あたしという受け皿と中身でこの世界に接して生きている。だから、一方向でしか物事を捉えがちになるのは仕方ないと思うの。

でもね、あたしの大切な人のひとりは、今すごい闘っていて。どうしてそんなに焦っているの?そんなに思い詰めてるの?って、まあ今は頑張ってもいないあたしが言うのもお門違いなんだけど、、、。彼の必死にもがいている姿を見て、いろいろ考えるところはあるの。それを書きたかったのだけど、具現化できる考えがいまなかった。でも、ただ、そんなに枠にとらわれないで、もっと自分に素直でいいと思うし、柔和でいいと思うし、世界を作るのはあなたでいいんだよって。それを伝えたい。でもあたしは無力で、言葉も知らないから、きっとうまく伝えられないと思う。そして、またVRを見てればいいって言われてしまう。