2時間だけ

現実はかくも厳しいもの。そんなことを思い知らされることがあって、でも稽古中で動揺はできなくて、自分の心をコントロールできないままに進めていきました。でもそんな不安定な状態が新しいものを生みだしたり、魅力的だったりするのかもしれません。

「女優なんだから。」という言葉は嫌いです。
何かを断定したり固定したりする考え方はナンセンス。

いつか唐組時代に当時つきあっていた恋人にふられて、あたしはその人と一生を共にしていこうと決めてたから大打撃で、割れたガラスのようになりました。翌日は通し稽古で、何事もなく平常心を保とうとしましたが、もちろんそううまくはいかず、みんなにバレバレで、、、そんなあたしを見かねて赤松さんが声をかけてくれました。

正直その時は「女優なんだから、頑張りなさい。」と月並みな言葉を言われると身構えていたのですが、赤松さんの言葉は、

「ノムチエ、2時間だけ我慢しな。」

なんかもう目から鱗でした。
そっか辛くてもそれを隠したり乗り越えたり無かったことにしなくていいんだ、それを芝居の2時間だけ我慢すればいいんだ。
そうしたらフッと気持ちが楽になって、2時間の通し稽古だけとりあえず頑張ろう、そう思えたのです。
きっと赤松さんも自分にそう言い聞かせて来た時がたくさんあったんだろうな。この時のことはよく思い出す。これからもたくさんそう思う時があるだろうから。それは決して芝居の時だけじゃなくて、様々な局面。それらを抱きしめて生きていけたらいいな。

と、鉛色の身体で稽古の日々を送りながら書き連ねます。
来週に迫った本番、赤松さんとの実に10年ぶりの共演です。同じ作品にはでないけれど。
是非見に来てくださいね。