彼女は鏡の中を覗き込む

シースルーの袖は 薄い桜色で
そこから生えている
白い華奢な 腕の先
きっとまだ なにも握られてなくて

まだなにも知らなくて
なにも見えなくて
なにも触れられない
だから彼女は手を伸ばす

でもね なにひとつ掴めないのよ
すべてがサラサラとこぼれ落ちてく
砂時計のように

その砂の底には
銀色の六角形の鏡

その鏡を覗き込めば
なにか見つかるかもよ

だから彼女は手を伸ばす

伸ばして 伸ばして 鏡に届いて
映る黒髪の少女と目が合うの

くちびるだけが震えてて
なにを唱えているの
なにを謳っているの

ねぇ教えて
それを知ったら 

なにかになれる?

ううん なれなくても 掴めなくても
未来はきっと その中に
だから彼女は鏡の中を覗き込む

item41218p1

小林エリカさんの個展より
題名と絵を拝借